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私の師、故北村重憲氏(完結編)

どこの経営者さんでも後継者については悩みを抱えています。

元々のサザンクロスリゾートはアクティビティの充実した「滞在型リゾート」を目指していたそうです、オーナーとなり社長の座を譲った後は、すっかりゴルフ場のカラーが先行してしまい、

北村さんは「このままではゴルフ場にされてしまうから。。」と危機感をあらわにしていました、その時には私にもゴルフ場にしか見えませんでしたが。。

「ここはゴルフ場じゃない、温泉もホテルもスパもある『滞在型リゾート』なんだ」と師は仰っていました。その昔は龍石という高級温泉旅館まで敷地内にあったそうです。

伊豆への着任早々、伊東の居酒屋で実の息子である後継者さんと顔合わせしたとき目の前で2人が大喧嘩していたのには面くらいましたが、じきに事情も分かってきました。

師はもともと滞在型リゾートを目指しており、それが経営を譲った後は利益率の良いゴルフのみに偏り元々の理念がなし崩しになっていると感じていたようでした。

テルムマランから移ったばかりの私は「ここも同じかい!!」と思いました(笑)未来の事業づくりって難しいですね。

私のミッションは北村さんの息の掛かった企業で修業をし、師の経営理念やチャレンジスピリットを受け継ぎ、いつの日か、それをサザンクロスに持ち帰る事です。

実の息子さんには、なかなか強く言えないのが実情のようです、私は世襲を経験したことがありませんが世の中、人と人と言うものは難しいものですね、その代わりに「お前を仕込む」と

私は師が顧問を務める伊豆の高級旅館「石亭」の営業部責任者とスパ事業責任者を兼任することになりました。営業は未経験なので次長に任せ、私はスパ事業(露天風呂付きセラピー施設づくり、当時はディスティネーションスパと表記)に専念。

※当時はこれらの分野が「リトリート」や「ウェルネスリゾート」などと集約されて行く前の創成期です、ディスティネーションスパとか滞在型リゾートとか、皆それぞれの呼び方をしていました。

仕事はスパ開業の実務です。施設オープンに関わるプレスリリースの打ち方、マスコミ関係者との付き合い方、デザイナーとの打ち合わせ、施工業者との契約の仕方など師のアドバイスを受けながら時に優しく時に激を飛ばされながら仕込まれます。

仕事を終えて、カルクナーレに戻ってからも指導は続きました。

例えば、ある日の「仕込み」はこんな感じです。

師が持ってきたのは2冊の新書、ポンと渡され「この本を読んで、後で要諦を聞かせてくれ」と。

渡されたのは最近亡くなられた経営の神様、稲盛和夫氏が書かれた「高収益企業のつくり方」と、有名経営コンサルタントが書いた経営マネジメントに関する本でした。

稲盛氏の著書は大変興味深く、一気に読み切りました!

そして私の中でも「ここだ!」と思える自分の気持ちが駆け上がる一文に出会います、稲盛氏の言葉がグッと響いた場所です。

早速、北村さんの所に向かい「要諦はここだと思います!」と話すと師は「ここだな!」と、新書でも躊躇せず、そのページを勢いよくバリバリバリッ!!と破ります。

そして「よし!これを血肉にするぞ!」と壁にバーン!!と貼り付けました!

その一文は、私の血肉となって心の深く深くに刻み込まれています(こうして師を思い出して、急に師の事を書いているのは稲盛和夫氏が亡くなられた事がキッカケです)

次の一冊、有名経営コンサルタントの経営マネジメントの著書です。

読んでみると、すごく勉強にはなったけれど稲盛氏の本と違い自分の気持ちが駆け上がる部分に出会えません。

何度、読み返してみても、いかにもマネジメントの硬い文章ばかりで確かに正論だと思うけれど何か響かない、、稲盛氏のようなプンプンくる「人間臭さ」や「熱い思い」のような物が伝わってきません。

これには困りました、いくら読んでも要諦が見つからないのです。

そんなこんなで数日経ち、用があって実家の千葉に戻っていたある日、自分の内面に正直に素直になって感じた事を要諦として失礼にならないよう「川柳」にしてメールで送ることにしました。

 

【川柳】

「〇〇さん、為にはなるが、つまらない」

※〇〇は実際には著者の名前を入れています。

 

しばらくして、伊豆の「師」から返信があり、

「師」の回答はこうでした。

 

「吾輩は、為にはならぬが、面白い」

 

笑!!!!

さすが師!!!やりますな!!

 

それから時間が流れ私が関わるスパ事業もリーマンショックの影響を受け、私の石亭での関りはスパ建設で終了となり、北村さんも病気を患い亡くなられてしまいます。

私が修行先からノウハウを持ち帰るという話は夢と消えましたが、千葉に戻って「師」の経営に関する考え方、プロセス重視の陽気なスピリットを自身の血肉にして現在のリトリート事業に取り組んでいます。

「ミドリマン、顔は丸いが、よく動く!」

師はよく、セラピスト達と夢を語り合っている時に「ここに俺の答えがある」と仰っていました。

私たちの思うような結果にはなりませんでしたが、伊豆での充実した日々は結果に執着せず「今」という人生の一瞬一瞬を楽しむ師のスピリットがそのまま反映されていたように思います。

私もまたリトリートにより日常から離れ「今」を味わい、皆様が充実した人生の時間を過ごせるような場所づくりを目指して行きたいです。

滞在型リゾートのパイオニアから受け継いだスピリットを今こそ!(番外編も書きました

 

奥房総の案内人、亀山温泉リトリート

豊島大輝(ミドリマン)

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本記事を書くにあたり、久しぶりにサザンクロスリゾートのホームページを拝見したところ「滞在型リゾート」と明記してありました、以前のゴルフ場一色から随分とリゾート色を強めた感じがします。

「師」の理念やスピリットが今になって時代に合ってきたように思えます、先見の明のある方でしたから時代は師の読み通りに動いて行くのかも知れません。

※本記事作成にあたり北村さんに指導を受けた者の一人としてネット上の「師」の画像を使用しております、どうかご了承くださいませ、不都合ありましたら削除いたします。